2002年5月13日月曜日

八月の博物館

gen1971gen2002-05-12 
 朝8時にきちんと起きてチベタンブレッドを食い、サランコットへ行く準備。トイレでうんこしながら瀬名秀明『八月の博物館』読了。SFかと思ってたら叙述トリックではないけどなんだかそういう部分を利用したファンタジーといった感じ。で、例によって今この日記をテキスト化してるのは約3カ月後の8/26で、もとになる当時の日記にはこの本の感想が書かれていないのです。面白かったしこれからどうなるのかさっぱり見当がつかないままどんどん進むしやや感傷的とはいえ物語も文章も巧いのですが、読了時の感想メモしてないんだよなあ。でもってこの本もこのとき泊まってたホテルのロビーに置いてあったものだから持ってきてないので今現在手元に現物がないのです。あ、ひとつ思い出したのだが、作者の分身といえる主人公の少年、かなりな好奇心の持ち主で、あたかもそれを当然であるかのように書かれているんだが、それなりに好奇心はなくはなかったとは思うもののそれを後まわしにして生きてきた私にはちとつらい。俺もこれくらい好奇心をすぐそのまま実行に移すように生きてくれば良かったのになあと作者が意図したところとは違うところで身につまされるのであった。あとは『バンデットQ』に似てるなあとも思った記憶がある。マリエットはあの映画のショーン・コネリーだ。
 
 で、日記内時間はこの日付に戻りまして、10時頃にサンダルを靴に履き替えてサランコットへ向かう。まずオールドバザールを抜けてサランコット登頂口までが実に遠く、つくともう11時。が、その登頂口と思ってたところは単なる展望台みたいなところで、周囲の人に聞くとどうやらここからまた違うところに出なくてはならないらしい。迷ってると周囲の人の一人がこっちだと言うので案内される側へ足を向けるとなぜかこいつが延々と俺をリードする。一般道に出てかなりわかりづらい順路でサランコット口へ。といってもこいつがそう言ってるだけで標識もなく実際のところよくわからない。ガイドブックは宿に置いてきちゃったし。後になってガイド代をくれなどと言われてもいやなので、お前はガイドか? 言っておくが俺はガイド代は払えんぞ、というと、自分はガイドではなく単なる学生だ。サランコットへ行く途中に俺の家があるから帰宅ついでだとの答え。それにしてはさっきの展望台みたいなところでいかにも俺を案内するためというタイミングで動き始めており、そういう点では実に胡散臭い。さらに俺がガイドブックの地図をみて頭に描いていた地図とどうも違うような気がして(結局これは地図どおりの道だったようではあるが)やはりこいつを信じられず、小道に入ったあたりの民家のおじさんに会う毎にこっちはサランコットか? と質問を繰り返してしまう。みんなそうだと答えるんだけど。で、そのあたりでいきなり彼の友人という奴がどこからともなくまるで狙い澄ましたかのように合流。またもう一度、俺はガイド代は払えないというが、彼らも我が家はこっちだからと言うばかり。そうこうしながら山道をどんどん進み、このあたりがぼくのうちなんだよなんて言いながらしかし自分の家を明確に示そうとはせずに一休み。3人で座りながら、しつこいようだが俺は本当に君らには一銭も払えないよと言うと(我ながらしつこいとは思うがなんとなく信用できない雰囲気があった)、我々はガイドじゃないからガイド代なんていらない、我々は学生だ、英語の辞書さえ買ってくれれば満足だなんてことを言い出しやがる。ここまで案内してから今更何を言うのか。この馬鹿どもが。ふざけんな。頭に来たので一人で行くと言って立ち上がり歩き出す。辞書が欲しいとか何か見返りが欲しいのなら初めから言えばいいのだ。その上で断られたのであれば連中だって無駄に歩かなくてもすむしこっちもむかつくこともない。前々からインドやらネパールやらはそうだが、先にこちらが頼んでもいない親切をしておいてから何か見返りを欲しがるという手口をやる連中が非常に多い。中には先に親切にされたからといって仕方なく払ってしまう人も多くいるからだろうが、このやり方は払おうが払うまいが気分は悪いだけだ。言葉の壁があるため、あとになって請求された場合に「手前が勝手に俺が頼みもしねえのに案内したくせに今になって金よこせじゃねえよ、はじめに言えよ」といった、相手のシステム的間違いを指摘しながらの文句を言えないのも立腹の要因の一つです。
 
 で、結局連中を残し一人でどんどん進んだ結果、あっという間に道に迷った。せめて獣道でもいいからあればいいのだが、それもよくわからなくなり、しかし足場になりそうな段差はあるのでとりあえず上に進む。下に降りて連中と再会なんてしたくないからね。すると上の方に民家を発見。道はないけどなんとかはい上がる。家の裏手に水牛やらの気配がしたので行くと娘さんが3人作業中。助かった。で、サランコットはこっち? とか聞いてるとお父さん登場。しかも英語を話せる。事情をカタコトだけど説明すると、まあ休めと椅子を勧め、水を汲んでくれる。もちろんミネラルウォーターではないのだがおいしくいただきました。それから道を教えてもらい途中まで案内されて、お別れしてまた山をのぼる。途中いくつも民家があるのでその場その場にいる人たちにサランコットの方向を確認してのぼっていく。すると何やら私有地のようなところに出て犬に吠えられるが、そこの住人とおぼしきおじさんがここを通りなさいと教えてくれ、さらにサランコットはこの道をまっすぐだと示してくれたところにはなんと車道がある。礼を言って車道に出て道なりに進む。しばらく行くといかにもツーリストのための食堂がいくつかあり、車道をはずれたところにサランコット行きの階段を発見。腹も減ったのでその横のレストランでジュースとインスタントラーメン。食い終えてまたのぼる。あとはもうとてもわかりやすい道。頂上近くにいくつものレストランとゲストハウスがあり、そこから数分のぼってついに山頂へ。といっても特に感動はないのだが。曇っててヒマラヤはちらっとしか見えないし。この時点で午後2時半頃。長かった。雲が動いてヒマラヤ見えるかもとしばらく待つが、3時頃になっても雲は動くけど相変わらず部分的にしか見えないので諦める。
 帰りは今来たのとは逆方向のレイクサイド方面から降りることにする。しかしこのレイクサイド方面ルートというのは一応あるんだけど、どうにも今来た道とは異なり狭くて急で危なそう。でも行く。途中車の通れそうな道と交差したりするが、しかしここは山道を降りたいのでそっちを選んでどんどん降りる。のぼりの時もそうだったのだが、途中現地の子供たち、というかガキと数回すれ違うのだが、こいつらったら外国人を見るとすぐに「キャンディー?」とか「1ルピー?」とか言ってくる。単に「ナマステー」「バイバイ」とか言ってりゃかわいいものを、どうも外国人は何かくれるものであると思ってるらしい。下りルートは上りよりさらにそれがひどく、ガキ3人がかけよってきて俺の手を握りかわいぶったあげく「キャンディー?」「ルピー?」「フォト?」だのしつこいったりゃありゃしねえ。手をふりほどいてさっさと歩いてくと石を投げてきやがる。届かないんだけど、でもこの投石が原因で遭難した旅行者もいるのではないか。まったくむかつくガキどもである。こんなガキどもを純朴な、我々が失った目の輝きを持つ子供たちなんていう反吐の出そうなことを言ったり書いたりした連中はどうにかなってしまえ。が、しかしこういうことをガキがするってことは、過去にキャンディーを与えたり金を与えたり写真撮ってそのお駄賃をあげたりした連中が結構いるってことだ。そのためにこのガキ連中は極めて素朴に外国人はお菓子とお金をくれるもんだと思いこんで素朴にそれをねだってるだけなのかもしれん。我々が失ったギラギラと欲望に輝く瞳を持ってな。この他にもガキがやたらとガイドを申し出たりとかありました。これだからガキって嫌い。念のために書いておくけどネパールの子供が嫌いなんじゃなくて、人間の子供ってものが嫌いだからね、その辺勘違いして抗議しないでください。
 で、そうしながらも歩いていく途中でジュース売ってるところがあったので飲む。観光地料金で25ルピー。細かいのが6ルピーしかなく、500ルピー札を渡す。すると店のお姉ちゃんは当然釣り銭がなく、下の方まで両替に行くことに。大変申し訳ない。20分ほど待ってるとお姉ちゃんが汗だくになりながら帰ってくる。がしかし、金額がでかかったため釣り銭が完全には集まらず、あと30ルピー足りないと困った顏。そこでじゃあコーラもう1本くれ、それを君にプレゼントだなどと日本人相手に日本語だったら恥ずかしくて言えないようなことを言って去る。しかしお姉ちゃんはコーラを飲もうとはしてなかったようで、きっとその30ルピーぼろもうけだと思うがまあいいや。うるせえガキどもに1ルピーあげるよりずっといいです。
 でもって降りてくと道はあるのにそれをさえぎる柵がある。しかし道は他にはないので柵を越えて降りていくと、どうも柵から先はやたらと落ち葉とかにまみれておりここんとこほとんど誰も歩いてないに違いないといった雰囲気。そして周囲は林に囲まれ薄暗く、人の気配がまったくなし。そんな中を延々一人で降りていく途中、がさごそと誰かの足音が聞こえ、人がいるのかと思ったら牛でした。柵でとおせんぼしてある道だったのでこの先どうなるのかわからないところをひたすら降りるが、まあこういう状況でどうにもならなかったことは今までないので気楽に構えて降りていくと林が開け、やがて民家も見えてくる。そこで庭仕事してるおばちゃんもいたのでレイクサイドはこっちかと確認。どんどこ降りてようやく先日自転車で走ったあたりに出る。この時点で4時半?5時頃。明るいうちで良かった。
 そっから延々とレイクサイドを通ってダムサイドへ。しかし今日のレイクサイドはここ数日中でも最も人気が少ないです。どうしたのかしら。小腹が減ったので夕飯にはまだ早かったがジャーマンベーカリーでチーズケーキとスプライト。一休みしてホテルに戻る。6時半頃着。随分歩いた。夜、食事に外へ。サランコットからの帰りにレイクサイドを通ったためか妙に西洋料理が食べたくなり、近くのやや高そうなバンブーガーデンへ。すると若い日本人女性がいたので挨拶して一緒に食事。彼女は8カ月ほど旅行していてあと1カ月くらいで帰国らしい。ちなみにこの人はホテルひまりに宿泊、バラナシではクミコハウスにいたということ。久美子さん一家は地元のマフィアにショバ代を払っていないため気楽に外を出歩けないとか地元民にもマフィアからの脅しがかかててるためにリキシャなんかも直にクミコハウスへ運んでくれないというような話を聞く。9時頃まで喋って戻り、本日の山歩きで生じた首筋の日焼けの痛みを我慢しつつ寝る。

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