2011年7月15日金曜日

マルマルモリモリ魔性の女

●魔性の女シンポジウム

 友人のスカーレット・バトラー女史(仮名)が現在人気の某女優を指して「今、魔性の女界で彼女の右に出る者はいない」とつぶやいた。バトラー女史によれば、これはその女優がドラマで共演している男優と揃って出演した朝の番組でのインタビューを見て直感的に抱いた感想だという。以下、バトラー女史を通して聞いたインタビューのやりとりを、見ていない私が状況を想像で補完しながら再現したものを簡単に記す。

インタビュアー「ふたりは大人になったらどんな人と結婚したい?」

女優「(男優の顔を覗き込み)○○ちゃん? ○○ちゃん? 男優くんのかーのーじょーなーんーでーしょー(笑)」

男優、照れつつ否定も肯定もしない(できない?)。

インタビュアー「じゃあ女優ちゃんは?」

女優「(しれっと)私は男優くんみたいなやさしくておもしろい人がいいです!」


 うまく言葉にならないがこれは危険だ。こんな女が身近にいたら私のような純朴な男は確実に身の破滅だ。テレビの向こうの話で良かったとほっとしたのもつかの間、バトラー女史は続けて「しかしこういう女は一定の割合で存在しているものだ。学校なら少なくともクラスにひとりかふたりいるレベル。君だって接触しているだろうし今後も接触してもおかしくない。気をつけろ!志村うしろ!」などと言う。さらに共通の友人であるシープ・アダマ女史(仮名)も「この手の女はそれとわかりやすいものだけではく、わかりやすくない形で存在するのも少なくないので本気で気をつけたまえ」などと追い打ちをかけてくる。
 ではいったい何に気をつけたらいいのか、何がそれほど恐ろしいのか。わかるようでわからない、わからないようで直感的にはわかる気もする現実の恐怖にどう立ち向かいどう対処したらいいのかを学ぶため、魔性の女に敵愾心を燃やす上記二人に、共通の友人でありやはり魔性の女を冷ややかな目で見ているレディ・シーライオン女史(仮名)の女性三名から教えを乞う「第一回魔性の女シンポジウム」が開催されるはこびとなった。
 以下はシンポジウムに参加することで学んだ魔性の女というものの生態、及び男という立場からの魔性の女対処法の私なりのまとめである。なお、講師の女性三名は話の流れ上仮名をつけているが、三名とも概ね魔性の女についての意見が一致していることもあり、以後は三者を書き分けていはいないので上記の仮名は忘れていただいて構わない。当人たちもよそでこの名前を一切用いてはいない。また、冒頭の女優が誰なのかという疑問についても一切回答するつもりはないので各自ご自由にご想像願いたい。

●自分は傷つかない女

 そもそも「魔性の女」とは何か。イメージとしては男を手玉にとる女だが、今回のシンポジウムで得た知識や情報を最大公約数的に半ば強引にまとめると、魔性の女とは「自分は傷つかずに誰かを不幸にする女」といえるようだ。もちろん誰かを不幸にする女の全てが魔性の女というわけではないが、魔性の女は誰かを不幸にする。
 冒頭の某女優でいえば、男優に彼女らしき相手がいることをわかっていながら男優に甘え媚びるような態度をとるだけでも充分「魔性の女」といった感じだが、同時にこのインタビューはテレビ放映されているものであり、当然のことながら男優の彼女も見ている可能性が充分にある。男優の彼女はこの番組に何を見るのか。それは女優に祝福を込めて冷やかされているようでありながら、実際には女優にちょっかいを出されることで女優へと気持ちが傾き、自分から心が離れていく恋人の姿だ。さらにその女優が自分の恋人のような男がいいといっている、いわば横取りされてしまう危険を感じさせる光景だ。
 テレビにうつる男優と女優はお互い楽しそうにやりとりしており、視聴者も微笑ましくそれを見るだろう。誰も傷つく者はいないように思われる。だが、男優の恋人だけはそうはいかない。例えこの後恋人である男優が自分の前に現れ抱きしめられ愛してるよなどと耳元でささやかれたとしても、他の女とのあんな姿を目にしてしまった後ではもはや彼の言うことを信用できない。魔性の女とはすなわちそういう存在なのだ、とシンポジウムの女性講師三名は言う。

●無駄に枕を濡らす男

 しかしこの場合、男に恋人がいるからこそその人を傷つけてしまうのではないか、私のように独り者であるならば問題はないのではないか。こうした疑問を抱くのは決して私だけではないだろう。むしろ独りである現状、魔性の女はウェルカム、積極的に弄ばれたい、遊ばれたい。男たちがそう考えても無理はない。
 だが、魔性の女が我々男に色目を使うのは、決して我々男本人に興味があってのことではない。単に自分がちやほやされたいから、みんなに人気がある自分を演出したいから身近な男友達に近づくのだ。魔性の女はお前になんか一切興味もってねえんだよ、手だって握らせやしねえんだよ、と、女性講師陣は厳しい現実を突きつける。
 とはいえ男は魔性の女の言動を勘違いし、実際に彼女に気持ちが傾いてしまうかもしれない。そしていざ「つきあってください」なんて言おうものなら「えーぜんぜんそんなつもりじゃなかったのに、ごめんね。でも今後ともいいお友達でいましょうね」などとあっさりばっさりあしらわれてしまう。男の心はずたずただ。さらに帰宅後、男は枕に顔を埋めながら勘違いしてしまった自分を責める。
 だが男性諸君、そこまで自分を責める必要はない。女性講師によれば、魔性の女ははっきりと言葉で意識しているかどうかはともかく、本能的にしろ何にしろ、自覚的にそういう言動をとっているというのだ。つまり意図的に惚れさせておきながら、はなから応えるつもりはないというのだ。だからせめて、枕を濡らす前にさっさと見抜いて深みにはまらないようにするべきなのだ。

●魔性の女ピラミッド

 だが、確実に見抜くための決定的な方法は存在しない、と女性講師たちは諦め顔で嘆息する。すでに多くの男性にちやほやされている女は魔性の女の可能性があるのではないか、だったらこうした女を避ければいいのではないかという私の提案にも、確かにそれはある程度有効かもしれないが、本当にいい子や本当に魅力的だからこそ男性に人気があるケースも少なからずあるのだ、と講師陣は返す。そのため、最初から人気者を避けると本当に素敵な女性が自分に興味を持って近づいてくれているのに無駄に警戒してチャンスを逃すこともあり得るという。それは実にもったいない話だ。もっとも実際にそういう人が私に近づいてくるのかどうかは疑問が残るが、そうした疑問は今現在のテーマとは方向性が異なるので保留させていただく。
 では、女に人気のない女という視点から見抜くことはできないだろうか。今回参加の女性陣全員が魔性の女を好ましく思っていないところから考えても、この方法はかなり有効なのではないか。だが、これもまた難しいようだ。この方法で見抜くことができるケースもなくはないと講師陣は言うが、しかし魔性の女業界にはピラミッド型の実力ランクのようなものが存在し、これで見抜ける程度の魔性の女はピラミッドの底辺にうじゃうじゃいる雑魚にすぎないのだという。魔性の女ピラミッドの上層部に位置する者たちは女性の友人にも囲まれているため、やはり見抜きづらいというのだ。
 ここで疑問が生じる。彼女持ちの男に平然と近づく魔性の女がいかにして女性の友人とうまくやっているのか? 女性の友人たちは魔性の女に自分の男の気持ちを奪われる危険を感じないのか? 講師陣からの回答は極めて明確なものだった。曰く、自分の取り巻きとなる女友達の恋人には色目を使わないという、魔性の女なりの仁義のようなものが存在するのだろう、と。すべては計算づく、魔性の女はやはり魔性であると裏付けられることばかりだ。こうして力量のある魔性の女ほどいともたやすく魔性ならざる女に擬態し、私たちは、少なくとも私は見抜けない。

●ルールと覚悟

 以上のことから、魔性の女被害から完全に身を守って生きていくことは非常に難しい。だが、未然に食い止められるものがゼロではないことも事実だ。魔性の女ピラミッド上層部は無理でも、少なくとも雑魚レベルであれば少しは上記の方法で見抜くことができるだろう。また、途轍もなく強固な意志が必要となるだろうが、伴侶がいる場合は、相手が魔性の女であろうとなかろうと何が何でも伴侶以外の女性になびかないという自分ルールを徹底する、という方法もなくはない。この二点に気をつけられれば、少なくとも自分の伴侶まで傷つけることはある程度避けられるのではなかろうか。
 伴侶がいない男の場合は、後の伴侶となる可能性のある人まで遠ざける危険を避けるため「伴侶を傷つけないルール」を行うべきではないが、だからといって相手が魔性の女か否かを見抜けないことには変わりないので、ここはもう心をずたずたにされる覚悟で臨むしかない。惚れた女が魔性の女だったら枕を濡らす結果となるが、それでも傷つくのは自分だけだ。世界は変わらず平和なままで朝がくれば昨日と同じく陽はまたのぼる。一年後には別の女に気がむいているだろう自分を想像して、今だけ泣き腫らせばいい。もっとも一年後に惚れた女が魔性ではない保証はないが、そしたらまた同じことを繰り返すだけだ。大丈夫、一度立ち直れたなら次も立ち直れるに違いない。

●魔性を見抜くのは女

 長々と魔性の女とは何か、魔性の女をどう見分け、どのように身を守るべきかを女性講師三名の指導のもとに考えてきたが、あくまでこれは魔性の女にいいように使われそうな男の立場でのまとめにすぎない。女性が魔性の女からどのように身を守るべきか、この世から魔性の女を根絶する方法などについて、残念ながら私は何のアイデアも持たない。ただひとつ、少なくとも男よりは女の方が、同性だけあって魔性の女を見抜く能力を持つと私は考える。
 そこでこのブログ記事を読んでいるかもしれない数少ない恋人同士、あるいは夫婦のみなさんは、そのことをお互い認識した上で、妻もしくは彼女の「あの女は魔性ではないか」という直感的意見に、夫もしくは彼氏がきちんと耳を傾ける、そんな信頼関係を築いてもらいたい。これができるかできないかで、魔性の女被害発生率は大きく変動するのではなかろうか。ただし私を含む独り者はこの方法を実践できないので、今後も枕を濡らす覚悟をしておくように。
 またその他の資料として瀧波ユカリ『臨死!! 江古田ちゃん』(講談社)に登場する「猛禽」や、ライムスター宇多丸ほか『ブラスト公論』(シンコーミュージック)で語られる「巨匠」も魔性の女の一例として参考にしていただきたい。
 以上、わたしの拙い思考と文章が、わずかでも悲劇を食い止めることに役立ってくれたなら幸いである。講師陣には大きく感謝するとともに、彼女たちのさらなる研究を持ち寄っての第二回魔性の女シンポジウム開催に心から期待をしながら、今回はこれにて筆を置かせていただく。
  

参考
Togetter - 「魔性の女サロン
Togetter - 「続・魔性の女サロン
Togetter - 「新・魔性の女サロン~重い女と取り巻き女


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